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ターミナルケア基礎研修
介護現場で「看取る」ということ

HORTON 現任者研修
10回「ターミナルケア基礎研修」
介護現場で「看取る」ということ

2022.04.28

一般に「病気で死が身近に迫っている時期=終末期(ターミナル)に行われるケア」と定義されるターミナルケア。「ターミナル」は医療がメインの場合で、介護がメインの場面では「看取り」という言葉が選ばれる傾向にあります。そこで今回の研修では介護の現場で求められる「看取り」の基本的な概念と、その具体的な取り組み方について学びました。座学中心となる今回の研修は、介護アドバイザー・大瀧厚子先生のネット配信による貴重な講義から、参加者全員によるディスカッションへと続きます。

病院だけではなく
在宅や介護施設で「看取る」時代に

ようやく私たち介護従事者がこの分野にかかわれるような時代になってきました。というのも、ターミナルケアとは本来、看護・医療分野の仕事だからです。この概念や取り組みが介護の分野にも波及してきた背景には、現在の日本が直面する大きな社会的課題があると大瀧先生は指摘します。それが「多死」への対応です。

厚生労働省によると2018年における国内の死者数は136万人。これは同年の出生数91万人に対して1.5倍という高い値です。しかも、この「生まれる人」より「死にゆく人」の方が多い傾向は、今後数十年続くと予想されています。このようにして人口減少が加速していく状況を「多死社会」と呼びます。

こうした超高齢化社会が進むにつれて様々な問題が生じています。そのひとつが「看取る場所」についてです。現在の日本では8割以上の人が病院で最期を迎えています。しかし、このままの状況が続くようでは、もう病院で対応しきれません。そこで最近メディアなどでも盛んに取り上げられるようになってきたのが在宅や介護施設での「看取りケア」です。ただし、「看取り」という言葉はあまり良いイメージを持たれておらず、その正確な意味も浸透していないのが現状のようです。

最期までその人らしく
「生きる」ことを支える

そもそも「ターミナルケア」と「看取りケア」を混同している方が多いかもしれません。どちらも終末期(ターミナル)を迎えた人を対象とする点は同じですが、前者が病院で治療を受け続けるのに対し、後者は施設・在宅でケアや「その人なりの生活」支援を受けることは主たる目的であり、家族の了解のもとで積極的な治療行為は行いません。つまり、病院でのケアは治療優先、施設・在宅では生活優先というわけです。

ただ、看取りというとやはり病院でのイメージが強く、医療設備のない介護施設や自宅で最期を看取るのには不安も感じます。

しかし、大瀧先生はこう断言しています。

「“医療がなければ看取ることが出来ない”は誤解です。実際、看取りの場面で医療がどうしても外せないのは死亡診断の場面だけなのです」

さらに、施設・在宅での介護場面では、死が迫った時期だけではなく、「普段の何気ない日常」を大切にしてほしい、と大瀧先生は訴えます。そして、ただ死を待つのではなく、最期まで「その人らしく生きる」ことを支援していくことが重要だと強調しています。「看取り」とは単に臨終の瞬間に立ち会うだけではなく、あくまで日々の介護の延長上にあるべきだという考え方です。

では「その人らしい生き方」を介護従事者はどのように支援していけばよいのでしょうか。実際これはかなり難しい問題のようです。過去に数々の「看取り」に立ち会われてきた大瀧先生でさえ「迷い、悩み、それでも答えは出ません……」とおっしゃっているほど。そもそも満足のいく「看取り」は人によって違い、正解はないのが当たり前だそう。それでも、その人が最期を迎える瞬間までできる限りの支援を行い、「やれることはやった」「これでよかったんだ」と思えることを、ひとつでも多くしていくことをめざす。つまり「結果そのものよりも、そうして迷い、悩みながら、試行錯誤を繰り返す、そのプロセスこそが大切なのだ」と私たち介護支援者にとって力強いエールを送ってくださっています。

「死」をタブー視せず
「看取り」で感じたことを語り合う

研修の締めくくりとして、参加者全員によるディスカッションを行いました。「看取り」「ターミナルケア」を通して、「死」という私たちが決して逃れることのできないテーマについて改めて考える貴重な時間となりました。

そもそも私たちは普段から「死」について考えたり、だれかと語ったりすることをタブー視しがちです。「死」とは「生」の延長にあるもで、何人もそれから逃れることはできないにもかかわらず。だからこそ、あえて言葉にすることで、自分の気持ちが見え、かたちになり、実現につながっていくと大瀧先生はおっしゃいます。

ディスカッションでは、訪問介護の現場で実施に「看取り」にかかわったり、過去に自身の家族を亡くしたりと、それぞれが身近な「死」の体験について語り合いました。そして最後に、今回の研修を通して考えたこと、感じたことを発表してもらいましたので、その一部をご紹介します。

ホートンケアサービス・スタッフMさん

「(ターミナルケアについて)経験を積ませてもらっているありがたい立場だなぁと実感しました。だからこそ、看取らせていただいている、という姿勢で臨みたいと思います」

ホートンケアサービス・スタッフKさん

「先生もおっしゃっていたように、看取りとは“死ありき”ではなく、“生きる”という意味で私たちがケアするという考えを常に頭の中に入れて取り組んでいきたいです」

ホートンケアサービス・スタッフWさん

「私が一番心に響いたのは、このディスカッションでのみなさんのお話でした。実際の現場で看取りにかかわった自分自身の体験もたしかにリアルですが、今回のようにプライベートも交えた各々の体験を語り合う機会をつくることは、ターミナルケアや死について考えるうえでとても有意義なことだと思いました」

ホートンケアサービス・スタッフSさん

「立場上、利用者さんからよく一方的に怒鳴られたりすることもありますが、あまり腹が立ちませんし、こうして改めて死や看取りについて深く考えると、利用者さんのどんなわがままもすべて許せちゃうかな、っていう気持ちに変わってきます。そもそも利用者さんや患者さんにとって、怒ったり、わがままを言ったりすることはストレス発散、つまり唯一のアウトプットの手段でもあるわけで。そして同じように、私たち支援者にも、まさにこのような気持ちをアウトプットできる場が必要なんです」

今回の研修は「死」という私たちにとっては最も重く、答えの出ない難しいテーマを取り上げました。しかし、そうした思考を積み重ねることが、ひいては私たちの「死生観」や「人生観」を明確にしていくことにつながるに違いありません。「看取り」は介護従事者を成長させる大切な要素のひとつだと再認識できる貴重な研修でした。

公開日 : 2022-5-11 ホートンの研修

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