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炎上させない苦情・クレーム対応研修

HORTON 現任者研修
第9回「炎上させない苦情・クレーム対応研修」
気づく力、聴く力、そしてことばの力

2022.03.28

苦情・クレームとは本来、介護従事者の成長に欠かせない大切な情報源です。とはいえ、できれば避けたい、早く解決させたい、とネガティブに捉えてしまい、実際に苦情・クレームを受けた場合、なかなかそれらをプラスに活かすことができないもの事実です。この研修では、相手と職員、双方の心理を分析することで、苦情やクレームの性質を理解し、適切な対応のプロセスを身につけるヒントを学びました。

講師はANAにて客室乗務員、教官を経て介護業界へ転身、介護主任を勤めた経験を活かし、現場職員の接遇マナーの指導にあたっている濱島しのぶ先生。今回は濱島先生によるネット配信を教材に、途中、参加者全員による実例検討を交えながら、和気あいあいとした雰囲気の中で研修を進めていきました。ここではその様子の一部をご紹介していきます。

“五感の育成”
見えているのに見えていないこと

冒頭、講師の濱島先生は介護主任時代、毎朝朝礼でクイズと夜勤明けの職員による1分間のスピーチを実施していたエピソードに触れました。これは介護職員に「視点を増やす」ことを意識してもらうためのトレーニングだそうです。

実際に出されたクイズの例題のひとつをご紹介します。一緒に考えてみましょう。

問い:下の □ に入る文字は何でしょう?

A□DFGHJKL

*ヒント→「パソコンのキーボード」の文字列を思い浮 かべてみてください。

答え:S

お分かりになりましたか?

答えを知れば「ああ、それそれ」といった感じなのですが……。研修参加者のJさん(左)とYさん(右)もこの“難問”に少々手こずっていたようです。

仕事でもプライベートでも普段パソコンを何気なく使ってはいたものの、キーボードの文字の配列まで意識して見ていません。「毎日同じことをしていると、見えているのに見えていないことが多くなる」と濱島先生は指摘します。

介護現場では、利用者様のご様子、環境など、常に小さな変化に気を配る必要があります。そのためには、職員はできるだけ視点を増やし、視覚だけではなく、その他も含めた“五感”を養うことの大切さを改めて痛感します。

そして、そうした視点がとりもなおさず苦情・クレームの軽減や炎上しない対応へもつながっていく基本となるわけです。これから始業時には身体ストレッチなどに加え、脳トレなど頭の体操も組み入れる必要がありそうです。

迫真の演技による実例検討で
苦情対応のプロセスへの理解を深める

本講習では、成果をより上げるための4つのポイントが示されており、そのひとつが「演習はなりきってしましょう」でした。おもに昼休憩を挟んだ後半で実施された実例検討では、バディを組んだ参加者が、それぞれクレームを言う側と言われる側の設定に扮し、両者の立場をよりリアルに追体験してみました。

写真左は、Yさん(右)宅の新築祝いに訪れたJさん(左)が誤って真っさらのカーペットにコーヒーをこぼしてしまい、髪を振り乱して怒りを露わにするYさんを前に、ひたすら謝って許しを乞うJさん。

一方、写真右では両者の立場は逆転。友人の結婚祝いのために買ったグラスが割れていたとお客様であるJさん(左)に店員のYさんが詰め寄られている場面です。おふた方の迫真の演技には、事業所の男性スタッフたちも脱帽でした。

この演習で重要なことは大きくふたつ。ひとつは、クレームを言っている相手が何を困っているのか、一番訴えたいことは何なのかを知ること。

もうひとつは、反対に相手のクレームを聴く側のどのような言動によって気持ちが変化していくのかを知ること。それらの感覚を踏まえることで、濱島先生が提唱する「苦情対応の3つの基本ステップ」:初期対応(マナー)→中盤対応(聴く力)→終盤対応(伝える力、話す力)→苦情の浄化へのプロセスについて、より深い理解を得られた気がしました。

苦情・クレームは
「知らせてくれてありがとう」

ところで、ここでは苦情とクレームをひと括りにしていますが、厳密には両者は定義が異なり、「苦情=不満を言うこと」、「クレーム=要求」という意味合いをもつそうです。

ただ、共通して言えるのは、どちらもサービスの質の差を教えてくれる大事なツールであるという点。介護サービスにおいては、サービスを提供する側である法人(介護施設等)と、それを受ける側の利用者様とそのご家族との間で生じる要求水準の差から苦情・クレームが生じるというわけです。苦情やクレームはできればあまり受けたくないというのが本音です。

しかし、実はサービス提供者にとって一番やっかいなのは、苦情やクレームがあっても何も告げてこない“サイレントクレーマー”だと濱島先生は断言します。「苦情やクレームを新たなサービスや質の向上につながっていきます。だから“苦情を知らせてくれてありがとう”という気持ちが大切なんです」という力強い言葉が印象的でした。

あなたが大事にしているものは何ですか?
心のスイッチを入れる影響言語

人にはそれぞれ大切にしていることば(=影響言語)があり、心にヒットすることばが違うと言います。濱島先生はそれを「心のスイッチ」と表現しています。このことは、苦情対応の謝罪、共感、提案といったプロセスにおいて、相手の心や感じ方を理解するうえでとても重要な視点です。

そして、講習の締めくくりとして、参加者全員にこんな質問をしました。「仕事において、人生において、それぞれ大切にしていることばを10個ずつ挙げてください」

こちらも2人1組みのバディで行います。ひとりが頭に浮かんだことばを相手に口頭で伝え、もうひとりがそれを用紙に記入。10個ずつ挙げ終えたら交代します。

ふだん漠然と考えたり感じたりしているイメージを言語化して表現する作業は、思ったより簡単ではありません。それでも、書き出された10個ずつのことばを通して、自分自身はもとより、相手がどんなことを大切にしているのかを知るプロセスはとても新鮮でした。

この「大切なもの10個の質問」は今後、ホートンのスタッフや利用者様ともぜひ共有していきたいと思っています。

公開日 : 2022-4-6 ホートンの研修

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