スタッフ日記

M’s日記

新たなマスト

吹く風も夏めいて、ホートンにも明るい話題が色々ありました。 今回はその中の1つを、お話ししようと思います。

ある日、ホートンに一通のメールが届きました。 聴覚に障害があり、両耳に補聴器を付けている大学生からのアルバイトの応募でした。 もちろん他の方と同じ様に面接に来て頂き、お話を聞きました。 彼女は中学生の頃から両耳に少しずつ異変を感じ、そのうち全く聞こえなくなったそうです。 現在の彼女は、会話では相手が発する微かな「声」というよりも「音」を拾うのと同時に、読唇術を使っていると言います。

驚きました。

それは聴覚に障害があっても補聴器をつければ、完全に聴こえるものだと私たちは思っていたからです。 また読唇術と聞いたときに瞬間的に「見られている」と直感が働きました。 私達が関わるご利用者様も時折、音が聞こえづらい、声が聞こえないなどと言われることがあります。そんなときのご利用者様との会話は、普段よりも「見られている」と感じます。 更に、コミュニケーションとは相手と交わす言葉だけでなく、視線や仕草などのあらゆる情報の交流です。 改めて考えさせられました。 もっともまだまだ知らないことだらけです。

彼女との会話は向かい合えば、全く問題がありません。 しかし、どちらかがそっぽを向いていたりすると、会話は一向に弾みません。彼女もそれは認めています。 彼女と会話をしていて、私たちにはどこかとても心地よく感じたものがありました。 それは「間」でした。 このところ急く現状に飲み込まれそうな私たちには、程よい間隔だったのです。

ともあれ彼女が何故、ホートンケアサービスにアルバイトの応募をしてくれたのでしょうか。 それはあるALS患者さんが、ヘルパーさんの助けを借りて生活をしている様子が書かれている新聞記事がきっかけでした。 その記事を読んだ彼女は、自分も人を助ける仕事をしたい、誰かの役に立ちたいと強く思い、ALSの事を調べたり、資格を取りにいったりしたのだそうです。 彼女は、やってみたい!という軽い気持ちだけではなく、一歩一歩と確実に自分の想いを、自分の意志と力で実現していました。 私たちは、やる気に応えてあげたい!と思いました。

しかし、ご利用者様に不利益なことがあってはいけません。 考えれば考えるほどに、様々に弊害があるのは否めない事実でした。 ビジュアルとサウンドが同時に拾えなければいけないとなると、 ご利用者様の声や音だけによるサインに反応が出来ない。 機器類の発する音、とりわけ警報音に気付くことが出来ない。 電話応対が困難。もっとも緊急時の対応が難しい。 私たちは想定されるリスクを彼女に説明し、雇用においての条件も伝えました。 それを聞いた彼女は半ば諦めるだろうと思いました。

しかし、逆でした。

キラキラした目を、より一層キラキラとさせて彼女は言いました。 「お願いします。電話応対はスマホのアプリとBluetoothで接続したペンダント型の機器を、常に携帯していれば可能です。」 彼女の表情は、凛としていました。 私たちにはもう断る理由は見当たりませんでした。 「分かりました。では協議し改めてご連絡します。」 私たちは、彼女にそのように告げて、面接は終了しました。

翌日、私たちが出社すると、留守番電話に彼女からメッセージが吹き込まれていました。 内容は面接のお礼と、実際に電話応対機器を使用して話しているという説明でした。 私たちは改めて彼女の熱意を感じました。 そして後日、再び面接に来て頂きました。 再面接の当日は、採用を前提に彼女と話をしました。 内容においては、彼女にとって厳しいものだったに違いありません。 しかし彼女に少なからず可能性を見つけた私たちは、ホートンケアサービスの仲間として加わる新たな提案もしました。 彼女は微かな笑みを浮かべながら頷きました。

その新たな提案とは、彼女による記事の投稿です。 先ずはホートンケアサービスのホームページにあるスタッフ日記への記事掲載からスタートです。

2017年 ホートンケアサービスの仲間が乗る船に、新たなマストが立てられました。 そこにこれから帆が張られます。 帆は微かな風をも逃さず一身に受け、仲間が乗る船をゆっくりと前へ進ませてくれるでしょう。 ヨーソロー

H29.5.15.

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